第四話 海坊主(うみぼうず)がでる岬(みさき)
昔、会瀬から鮎川方面に行くときは海岸から浜づたいにあるいていきました。途中はきり立った、がけが続いています。会瀬と鮎用の間に小さな岬があります。岩が波うちぎわまでせまり危ないところでしたので昔から「とおれんじよ」といってます。通れないところという意味です。
ある夏の夕がた、小学生の男の子が鮎川の川口に住むおじさんの家に一人で行くことになりました。いつものように砂浜を通っていきましたが霧がたちこめてきました。「とおれんじょ」のところは、みちしおのため波が岩を洗い通れませんでした。少年は岩のかげでまつことにしました。そのうちにねむくなってきました。なま暖かい風とドシン、ドシンとからだにひぴく音で目をさましました。霧の中に大きな大きなはだかの人間が歩いてました。がけよりも高いところに、大きなギョロ目の男の顔があります。 ツルツルのまるい頭です。「海坊主が出た!」少年はかなしばりにあったように動くこともできず、声もだせないで見てました。漁師のおじいさんから聞いていた海坊主とそっくりです。海坊主はすこし、下をみるようなかっこうで少年のいる方はみないで会瀬にむかってあるいていきます。霧の中にはだかの背中がきえていきます。なんとなくさびしそうな背でした。 ふときがつくと霧が晴れていました。波も静まり岬を越えることができます。少年はいまみたのは夢なのかなほんとだったのかなとおもいながら後を振り返らずに鮎川にむかいました。 |
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